1970年11月6日/ニューヨーク
神出鬼没の連続爆弾魔フィズル・ボマーの凶行に市民が恐れおののく大都会。場末のバーに現れた青年ジョン(サラ・スヌーク)は、バーテンダー(イーサン・ホーク)に数奇な身の上話を語りだすーー。女の子<ジェーン>として生まれ、孤児院で育った”彼”は、18歳の時に恋に落ちた流れ者との子を妊娠。しかし、その男はある日”忽然”と姿を消し、赤ん坊も何者かに誘拐されていた。そして、出産時の危機から命を救うため、自分は男になったと話す…。
青年の長い告白を聞き終えたバーテンダーは、思いもよらないことを切り出した。なぜかバーテンダーは青年がジェーンからジョンに改名したことを知っており、彼が憎む流れ者への復讐のチャンスを与えると言い出す。わけがわからず混乱に陥ったジョンを地下室に導いたバーテンダーは、”時標変界キット”と称する機械を取り出し、ある日時をセットする。「深呼吸して、目を閉じろ」。バーテンダーがそう告げた次の瞬間、ふたりは跡形もなく地下室から消失した。
1963年4月2日/クリーブランド
ふたりが1970年のニューヨークからスリップした先は、かつてジェーンが流れ者と出会った日の大学のキャンパスだった。愕然とするジョンの前で、バーテンダーが驚くべき素性を明かす。何とバーテンダーは未来からやってきた時空警察のエージェントで、 “時標変界キット”とは携帯型のタイムマシンだったのだ。すでにエージェント引退を決意しているバーテンダーは、ジョンに自分の仕事を継ぐことを条件に、帽子とコート、札束、そして復讐のための拳銃を手渡す。
バーテンダーの提案をすべて受け入れたジョンは、コートの内側に拳銃を忍ばせ、キャンパス内で流れ者を捜し始める。まもなく彼が背後を振り返ると、そこにいたのは7年前の自分自身、すなわちジェーンだった。
1970年3月2日/ニューヨーク
バーテンダーには後継者探しのほかに、もうひとつ重大な最後のミッションがあった。それは因縁の宿敵である爆弾魔フィズル・ボマーを、この世から葬ること。予定通り、ジョンをジェーンが流れ者と出会った日に連れてきたバーテンダーは、単独で新たなタイムスリップを敢行し、フィズル・ボマーが現れる犯行現場に向かう。しかしタイムスリップの影響で疲労したバーテンダーは、格闘の末にまたもフィズル・ボマーを取り逃がしてしまう。
1964年3月2日/クリーブランド
ひとときの休息をとったバーテンダーは、とある病院に向かう。そこに現れた時空警察の幹部ロバートソンは、「未来への種はまき損ねるな。頼んだぞ。」と言い残し消える…。新生児室に侵入したバーテンダーは、生まれたての赤ん坊のジェーンを誘拐し、1945年9月13日にタイムスリップし、孤児院の玄関へ運ぶのだった――。
1963年6月24日/クリーブランド
バーテンダーに導かれて巡り合ってしまったジョンとジェーンは、情熱的な恋に落ちていた。公園でのデート中、バーテンダーが戻ってきたのに気づき、「すぐ戻る」とジェーンに言い残してその場を離れるジョン。バーテンダーから「これが宿命だ」と告げられたジョンは、愛するジェーンとのつらい別れに胸を締めつけられる。
1985年8月12日/時空警察本部
バーテンダー、ジョン、ジェーンの衝撃的な因果関係が明らかになるなか、未来に戻ったバーテンダーは後継者のジョンを医務室に預けると、引退後の生活を送るため”最後”のタイムスリップに身を投じていく。選んだ目的地は、フィズル・ボマーが大勢の市民を巻き込む史上最悪の爆破事件を実行しようとしている1975年のニューヨークだ。しかしバーテンダーは、まだ自分の本当の宿命を知らなかった。時空を超えた壮大な旅の果てに、彼が突き止めた呪われた真実とは……